京野カズカ
両手で押しても動かせない様な寝室の黒い扉だった。へはスルリと中へ入ってしまった。本当に扉は開けられたのだろうか。もう一度扉を押してみたい気持ちになった。57段の階段を降りて一階に戻った。
椅子に坐り直すと一日何も食べていない事を思い出した。薬指の指輪に唇をつけ「ゆで卵5分2個」と囁いた。
5分後にゆで卵が掌の乗っている。どうしてゆで卵が?他に何か乗るかと囁いてみたが、ゆで卵だけしか乗らない。考えない事にした。5分で現れるやや緩めの半熟ゆで卵が気に入っている。
クシャクシャゴクン。
残ったお茶でゆで卵を食べた。
左から風を感じた。天井が低い部屋があった。18歩そこまでは。部屋の左隅に黒髪で澄み切った青い目の子供が二本足で立っていた。
ゴクン。
「あなたは誰ですか?」
「Who are you?」
ガタン。
その子は左手の二本の指をこちらに向けて差し出した。
ドクン。
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