下村 憲司

   ・・・再び車窓から花火が視えた

   冬の花火は哀しみを誘うが悪くはない・・・U~nn どこかで 

   仕掛け花火は天空を一直に上りて・・・華やぎ光を放つ

   わずかな時を稼いで葉叢はかなくフェイドアウト・・・その先は

   一葉消え 二三四五六 七八九 ここは此処・・・いや

   微睡み三度で夢の続き・・・


   遠い妹が八歳 私は十歳

   年の瀬の夜八時過ぎサイレンの音を轟かせ赤い車群れをなして走り去る

   妹と目が合う互いに頷き脱兎のごとく 上着を掴み靴を履き走る

   北に走れば闇を切り裂くように天空は紅く染められている

   橋上は人だかり巧みに間を縫って前に前に出る

   老舗玩具問屋<源田>火元にて紅蓮の炎が雷を打つように走る

   

   突然破裂音が連続し花火が夜空に打ち上げられた

   歓声と溜息が入り交じる声の中 頬がじりじりと焼けつき

   からだが震えこゝろの奥襞 発火する


   冬の花火は綺麗だと感じた私を・・・私は恥じた

   妹は夢遊病者のごとく恍惚感に包まれ微動だにせず視続けていた

   目の前で指を弾いた

   一瞬 顔が歪みアスピリンを飲んだ直後の顔になった

   <何?>私は首を左に傾け帰りを誘った 妹は私の手を強く握り締めた

   無言が続く帰り道姉妹で罪深いとわなないた


   されど 妹は感受性の発露だけのこと イノセンスは罪なりや


   列車が次の駅で臨時停車するとアナウンスが入った

   ああ もう少し夢の続きが視たい・・・叶わぬか   

   夜が明けたら・・・世界が沈黙している・・・次の駅で降りる


   素足で砂浜を歩き 日の瀑布を浴び禊ぎする

   こゝろとからだは賦活され爽やかだ

   歩みとは<Every step of the way>

 

           道を歩いていく この道を歩いていく

         Are you sure → Yeah!

『ミち』

mimaculの公開ワーク「連歌のように」一本の小説(なのだろうか)をメンバー全員で書く試み。タイトルは『ミち』 【ルール】 ・決めた順番で回していく。嵯峨→山羊→河合→立蔵→堀井→林→川瀬→下村→京野→高橋→たまな→小高→元岡→古川 ・人物が登場する場合、名前は登場順にイ、ロ、ハと付ける。 ・1回の更新が短くても構わない。 ・前の人が書いたものを引き継ぎつつ、文体や口調が変わってもよい。